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イザベラ・バードの日本紀行 [読書(教養書・実用書)]


イザベラ・バードの日本紀行 (上) (講談社学術文庫 1871)

イザベラ・バードの日本紀行 (上) (講談社学術文庫 1871)

  • 作者: イザベラ・バード
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/04/10
  • メディア: 文庫



イザベラ・バードの日本紀行 (下) (講談社学術文庫 1872)

イザベラ・バードの日本紀行 (下) (講談社学術文庫 1872)

  • 作者: イザベラ・バード
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/06/10
  • メディア: 文庫



Kindleで読む本第2弾。
それなりに厚い・・・かは電子書籍なので分からないとしても分量がありましたが、出張の移動時間も費やして読み終わりました。

著者のイザベラ・バードはイギリス人の旅行作家で、開国直後の19世紀末の日本を旅行した記録がこの本です。
旅行記と言うより書簡形式となっています。

この本の読みどころは、日本人でもよく知らないこの時代の日本の生活が垣間見られるところと、当時日本を訪れていた数少ない西洋人も足を運ばなかった東北を旅行しているところです。横浜から入国し、江戸を通り日光を通り新潟に抜け、北上して青森まで行ってさらには北海道に渡ってアイヌの生活を見て、函館から船で本州に戻り、神戸、伊勢神宮、京都にも足を運んでいます。

書かれる日本の様子は、なかなか衝撃的です。美しいかつての日本なんてものを想像すると期待を裏切られます。
著者は20世紀以降に生まれた文化相対主義とは無縁の時代の価値観なので、文明と未開というフレームが見え隠れします。今で言えば偏見としか言いようがない表現も散見されます。しかし、だから率直で、西洋人から見た日本がどう見えたかもわかっておもしろいのです。

日本人については、貧相な体格、歩き方、顔つきも含めて会う人会う人「醜い」「汚い」という描写が頻出します。食べ物もひどいし、たくあんという「スカンク並に臭い」食べ物に辟易します。

ただ、これは一概に偏見と切り捨てる事はできず、どうやら当時の日本人は本当に汚かったようです。風呂も入らず、服も着替えず、不潔が原因の皮膚病が蔓延しており、家は蚤と蚊でいっぱいです。
女性はなぜか顔を白塗りして、歯を黒く塗っているし。

そもそも、旅行した季節が春から秋と言うこともありますが、男性も女性も服をちゃんと着ていない。ほとんど裸の人が多い。街を訪れる度に村中の人が集まってじっとのぞき込み、プライバシーも何もない。当時のイギリス人の道徳観から言えば、相当ひどいものだったようです。
あまり具体的な描写はなされませんが、日本人は嘘つきでみだらで道徳観にかけるという評価です。

その一方で、街にはゴミが落ちておらず、田畑は雑草一つなく手入れされ、貧しくきつい労働をしている人はいても、物乞いはいないことに驚きます。

村の様子は場所によって随分違ったようで、山間部はどうしようもなく貧しい様子で、一方意外?に、山形がとても発展して豊かな様子が書かれています。ただし、その山形付近は別として、全般的に道はひどく、雨が降ればぬかるみ、川も橋が流されていたりして、難行苦行です。また、次に行く場所について聞いても、知らないのか知っていても答えないのか、どこでもまったく要領を得た答えが返ってこない。

ただし、北海道については違った表現で、アイヌについてはその純朴さを評価し、容貌の美しさも評価しています。もっとも、これも文明と未開という立場がより明確であるからこそという気もします。

宗教についてもたびたび言及されるのもおもしろいところです。本人は当然キリスト教徒であり、各地でのキリスト教伝道の様子は異常な執念と思われるほど事細かに書かれています。一方で、寺院や神社は異教徒のもの、空虚なものという位置づけです。
日本人の宗教心の薄さにはあきれ、道徳心がなく物質的な欲求に動かされているのはそのせいだとの見方です。

もっとも、西欧を知ると、その思想、文化、生活においてキリスト教が以下に深く根を張っているかにうんざりするほどなので、宗教抜きに西欧の文明を受容するという維新のやり方が、前例のない実験だったということにも気づかされます。


この本には白黒のスケッチの挿絵がところどころに入っています。
これくらいだと、KindleのE-Inkでもきれいに見えて良い感じでした。
さて、次は何を読もうか。なかなか数少ないKindle版の中で読みたい本を探すのは難儀です。

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