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事例から学ぶ日本国憲法 [放送大学]

さて、仕事もばたばたなのですが、今学期の単位認定試験の始まり。
一科目目は「事例から学ぶ日本国憲法」。

安倍政権になって憲法改正がぐっと具体的な問題となってきていますが、その前提として憲法を勉強してみよう、ということで、これは講師の問題意識でもあるようです。

憲法について学ぶのは、高校の「現代社会」以来であり、当時のことは憲法のあっさりとした紹介と、地鎮祭訴訟など有名な訴訟の結果の紹介くらいしか思い出せません。それらは「事実」やいわば「正解」として理解していて、疑問を持つ対象とはならなかった気がします。
もちろん、その時点でも9条のように素直に読むと理解できないものもあったのですが、大人になってみると世界の異なる政体についての知識も蓄えられてくることもあり、「どうしてこうなっているんだろう」という分析の対象としてとても興味深くなってきます。

講義は国会、内閣、裁判所といった統治機構や地方自治について最初に概観し、後半は人権について多くのページが割かれています。それぞれ、具体的な事例が示され、これが憲法から見て正しいかどうかという議論が展開されます。これはこういう意味、というだけではなく複数の論が紹介され、その上で一応どれが有力かという結論が示されます。詳細な議論ではないのかもしれませんが、もう一段だけ深く知ってみたいというニーズにはぴったりです。


改めて憲法を見てみると、最初の国会のあたりからもとても新鮮。
まず第一に、憲法だけではほとんどのことが決まっていない、ということ。内閣法等の法律で補完されているのはもちろん、慣習であることがとても多い。国会の最初に天皇陛下がおことばを述べる、閣議は全会一致であるとか、どこにも根拠がない。

さらに、憲法に書いてあることも理念としてはごもっともであるものの、具体的な事例に当てはめるとどう解釈して良いか分からないことが多い。そうした課題について議論していきます。



・国会が国権の最高機関とは具体的にどういうことか。三権分立であるはずだが、その中で国会が他の二つより上にあるということか?

・公務員は全国民の代表であるべきなのに、政党ができてそれに支配されることは許されるのか?

・都道府県と市町村という地方自治の仕組みを道州制に再編することは許されるのか。地方自治を認めるということと、国が地方自治の制度を変えることを認めるということは両立するのか?

・法律の範囲内で条例を定めるというのはどういうことか。法律より厳しい条例、法律では対象としていないものまで含める条例を定めて良いのか?

・法の下の平等とはどういうことか。すべて平等であるなら、累進課税も憲法違反ではないか?

・憲法が保障する人権は、日本国籍を持つ自然人のみが対象か。天皇・皇族、法人、外国人には適用されないのか?



最後の人権の適用対象も、憲法では「何人も」と「国民は」が書き分けられているので、前者は外国人も含み、後者は日本人だけ、としたいところですが、どうもそのあたりは厳密に書かれていない様子。作って一回も手直ししていないものですからね。

結果的に最高裁の判決等で補って考えなければならないのですが、そういった解釈でいいのか、憲法を変えていくのがいいのかは難しそうです。

特に第9条。
子供の時にこれを読んだときにはどう見ても非武装を規定していて、自衛隊は違憲ではないかと思ったのですが、そう単純でもない。そもそも「前項の目的を達するため、」という文言が挿入された、いわゆる芦田修正が行われていますが、それでも解釈は難しい。

自衛戦力合憲論と、自衛力合憲論というのがあるそうです。

自衛戦力合憲論というのは、1項で禁じているのは侵略戦争であり、2項では侵略戦争のための戦力の保持を禁じている。そのため、自衛のための戦力は認められるという考え方。なので、自衛隊は合憲。

一方、自衛力合憲論というのは現在の政府の解釈であり、2項では全面的に戦力の保持を禁じている。だが、自衛のための最低限度の実力組織は戦力ではないために合憲。なので、自衛隊は合憲。

なんか無理があるように感じられますが、どうでしょう。
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