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川北稔「砂糖の世界史」 [読書(教養書・実用書)]


砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

  • 作者: 川北 稔
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/07/22
  • メディア: 新書



以前に読んだ、
加藤 祐三、 川北 稔「アジアと欧米世界」
http://t-takaya.blog.so-net.ne.jp/2012-07-17
の中で、砂糖入りの紅茶を労働者階級が飲むことが、産業革命を起こしたイギリスが世界システムの中心にあることの象徴であるという、印象的な話がありました。

今回の本は、その著者の一人がこの砂糖について書いた本です。岩波ジュニア新書なので、平易な語り口ですが、学者の書いた本なので、細かい証拠に基づいています。

砂糖は誰もが欲しがる「世界商品」の代表ですが、原料となるサトウキビの生産はどこでもできる訳ではありません。ですから、ずっと高級品で、薬のような扱いさえされました。
しかし、アメリカ大陸が「発見」された結果、ラテンアメリカやカリブ海の植民地で大規模なプランテーションによるサトウキビの栽培が進められます。サトウキビの生産に集中するため、その他の食料などはすべて輸入するモノカルチャーとなります。
さらに、サトウキビの生産には大量の労働力が必要とされます。そのため、アフリカから大量の黒人奴隷が連れてこられて働かされることになりました。

また、もう一つの世界商品であるお茶も、中国やインドから運んでくるわけです。

産業革命が起こると、工場での労働者が必要となります。工場での労働者は、昼から酔っ払っているような人間ではだめで、決められた時間に素面で働かなければなりません。彼らにとってうってつけだったのが、砂糖を入れてカロリーもとれる砂糖入りの紅茶となったわけです。

産業革命によって生産された綿織物が輸出され、それによってアフリカから調達された黒人奴隷をアメリカに連れて行き、そこで生産された砂糖をイギリスに持ってくる。
そして、中国やインドから輸入してきた紅茶にその砂糖を入れ、貴族だけではなく、労働者が飲む。
こんなことが出来たのは、イギリスしかありませんでした。

その後、甜菜によって温帯でも砂糖を生産することが可能となり、先進国では砂糖は薬どころか悪者にさえされるようになってしまいましたが、砂糖が引き起こしたとも言える黒人奴隷の問題は今でもアメリカとアフリカに爪痕を残しています。
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