仏教抹殺 [読書(教養書・実用書)]
松本に旅行したとき、松本城に隣接している松本市立博物館で展示を見ていて、松本は廃仏毀釈が激しかったところなので、寺が少ない、といった説明を読んだことが印象に残っていました。
廃仏毀釈は言葉としては日本史で勉強した覚えがあったものの、どんなものかは知らなかったので、本当にあったんだ、と。
その後、ある日新聞の書評を読んでいて、強い興味を持ったのがこの本です。
この本が言いたいことは「はじめに」に言い尽くされています。
明治維新後の廃仏毀釈の大波の中で、寺や仏像が破壊され、寺は半減。
鹿児島県などは一時寺もゼロ、僧侶もゼロになってしまった。
廃仏毀釈がなければ日本の国宝は現在の3倍もあったという話もあるそうです。
こうした話を聞くと、誰もが思い出すのがタリバンによるバーミヤンの磨崖仏の破壊で、もちろん、このことにも触れられています。
シルクロードを旅してみると、イスラム教徒や文化大革命で破壊された文化財をよく眼にして、なんと愚かなことを、と思いますが、日本でも同じことがあったのです。
第一章以降は、比叡山、水戸、薩摩、九州、宮崎、松本、苗木、隠岐、佐渡、伊勢、東京、奈良、京都と各地の廃仏毀釈の実態が紹介されていきます。
全国一律に起きたのではなく、濃淡があったのですよね。
ある藩だったところは徹底的に寺が破壊されているのに、そのすぐ隣は天領だったところで無傷とか。
著者は新聞社を経て独立して僧侶資格を持つ、という異色の経歴を持っていて、取材にもその経験が活かされているように感じます
冒頭の松本の場合は、かなり立派な寺があったのに、復活できませんでした。
それどころか、見てきた開智小学校の建物にも、破壊した寺の材木が使われていたのだそうです。
知らなかったなあ。
意外なことに、著者は「結びにかえて」で全体をふりかえる中で、廃仏毀釈にもプラスの側面があったのではないか、廃仏毀釈があったからこそ、仏教が消滅せずに現代まで生き残ったのではないか、と書いています。
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