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石弘之「感染症の世界史」 [読書(教養書・実用書)]


感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)

感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 石 弘之
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/01/25
  • メディア: 文庫



これも初版2018年が、2020/4/20に第9版となっていて、帯には「緊急重版」と書いてあります。

世界史というタイトルこそ着いていますが、ウィリアム・H・マクニール「疫病と世界史」ほど歴史っぽくなく、山本太郎「感染症と文明ー共生への道-」ほど文明論っぽくなく、強いていえば環境に重点があるでしょうか。
感染症にまつわるいろいろといった感じです。

「第一部 二〇万年の地球環境史と感染症」でも時系列に説明されるというのではなく、人類の変化、それによる環境の変化が感染症の問題を引き起こしているよ、という話で、
「第二部 人類と跫音するウイルスと細菌」ではピロリ菌、寄生虫、性交渉、ヘルペス、インフルエンザ、エイズと感染症別の話になり、
「第三部 日本列島史と感染症の現状」ではハシカ(麻疹)、風疹の問題から縄文人、弥生人の話に拡がっていきます。

第三部が新鮮だったと言えるでしょうか。

それぞれの病気で亡くなった有名人がまとめて書かれていたり、かなりいろいろな話が出てきて、良くも悪くも話がいろいろなところにとんでいる感じです。
いくつかの本を読んでから読んだからの印象かも知れないですね。

著者は感染症や歴史を専門とする学者ではなく、新聞社にいた人ですが、マラリア、コレラ、デング熱など多くの感染症にかかったという変わった?経験を持っているそうです。

あとがきには、本書の執筆について、
「はじめは病原体への復讐の気分だったが、書き終えて、彼らも人と同じように環境の変化に耐えながら、ともに進化をしてきた戦友のような気分になってきた。」

と書かれています。
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ウィリアム・H・マクニール「疫病と世界史」 [読書(教養書・実用書)]


疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/12/01
  • メディア: 文庫



疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)

疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/12/01
  • メディア: 文庫



感染症シリーズ。
これも文庫として2007年が初版ですが、2020年3月30日に第7刷となっています。

ただ、もともとは1975年(!)に書かれた物のようで、1977年に書かれた序にはエイズについて滔々と書かれていて、そこにも時代を感じます。
また、最初の人類の起源、出アフリカのあたりも現在の知見からすると古くささは否めないところです。

ただ、「世界史」と同様、一人によって書かれた通史という意味で、全体像をつかめるところは良いところです。

感染症がスペインの中南米征服を始めとする歴史に大きな影響を与えてきた、というのはジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」で衝撃を受けましたが、この考え方自体は彼のオリジナルではなく、以前からあったと言うことですね。

全体構成は、有史以前から、歴史時代、紀元前500年から紀元1200年まで、1200~1500年、1500~1700年、1700年~とおおくくりに章立てされています。
中世ヨーロッパのペストや、20世紀初頭のスペイン風邪といったトピックを並べるというより、時代を俯瞰しているところに特徴があると思います。

文明と周縁の関係で理解するという考え方は「世界史」と通底しているように感じます。さらに本書で提示されている面白い概念が、マクロ寄生、ミクロ寄生。
後者はまさに感染症を意味していますが、後者は支配層と被支配層といった社会システムを示しています。これらが表裏一体として歴史が語られます。

有史以前に人類がいたアフリカは熱帯で感染症にさいなまれ、生態系の一部として量がコントロールされていました。
しかし、アフリカを出て温帯に打って出た途端、ずっと感染症のリスクが低くなり、拡がっていきます。
そしていくつかの場所で文明を興すことになります。
メソポタミアで人口50万人に達したとき、麻疹が流行り続ける規模にも達してしまいます。
中国では感染症の多さが華南への展開を阻みます。
インダス文明からインドに拡がると感染症に遭遇し、それが異民族間での接触を最小化するカースト制の原因ではないか、とも。
そして、地中海世界は乾燥しており、水辺に裸足で入る農業も行われず、感染症のリスクが低い地域だったのではないかと考えられます。

ここまでの段階で、人口集中が起きて感染症が流行り始めていても、各文明でそれぞれ違った感染症を持って、それとのバランスを保っていたのではないかと考えられます。
しかし、紀元をはさんだ時代にユーラシア大陸の東西の交流が生まれ始め、互いの感染症が行き来して甚大な被害を及ぼすようになります。
アテナイの崩壊、ローマ帝国での疫病。キススト教の国教化や仏教の広がりなど、疫病で苦しんでいたことと関係があるのではないかとさえ考えられます。

そして13世紀にモンゴルがユーラシアを席巻し、東西の交流が活発になっていった後、ペストがヨーロッパを襲うことになります。ヨーロッパで舟運が発達してきていたことも、原因にあるようです。
ネズミ、ノミ、人間の間で行き来するペストは船の移動と相性が良いのです。
こうした甚大な影響を残しつつ、旧世界の感染症は、共通化、いわばグローバルスタンダードが確立していくことになります。

そして、新世界であるアメリカと旧世界の接触が生じ、抵抗力を持たない新世界の人々が感染症に斃れてしまったのは今ではよく知られている歴史です。

そこから現代に到るまでの歴史は、スペイン風邪や医療の発展以外の部分も触れられていて新鮮でした。
種痘が技術として確立されてからそれが社会に受け入れられる過程は、イギリス、アメリカでどのように行われたのか。
インドの風土病だったコレラが交通網の発達で全世界で流行し、それがヨーロッパの上下水道の整備にいかに影響したのか。

特に近代においては軍との関係が強いです。
感染症は人が移動する貿易、そして多様な人が集まり遠征する軍と古来からも深く深く結びついていたのですね。
日露戦争で日本が兵隊に予防接種を打ったことも他国にとって大きなレッスンになったようです。

鬼頭 宏「人口から読む日本の歴史」では、江戸のような都市は感染症の流行で人が亡くなってしまうこともあり、蟻地獄のように人口を吸収していたことが書かれています。

これは世界でも同様だったようで、都市自体が人口流入なしに人口を維持できるようになったのはせいぜい1900年頃だそうです。そこから世界の人口の急増が始まっていきます。


読み終えて改めて、感染症が人類の歴史、習慣や宗教も含めた文化に与えた影響が大きかったことを感じさせられます。
一見戦争や社会の混乱によって人口が減少したようにみえる時期も、大方感染症のせいに違いない、ということです。

新型コロナウイルスはこれまでの歴史における流行に比べると人口に影響を与えるほどにはなっていないとは言えるでしょうが、やはり人間の行動様式に影響を与えるのではないかという気もしてきました。
そして、ウイルスとのつきあいは、今後の歴史にも続いていく運命のようです。
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山本太郎「感染症と文明ー共生への道-」 [読書(教養書・実用書)]


感染症と文明――共生への道 (岩波新書)

感染症と文明――共生への道 (岩波新書)

  • 作者: 山本 太郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/06/22
  • メディア: 新書



先日読んだ加藤茂孝「続・人類と感染症の歴史 ー新たな恐怖に備えるー」 は病気別に歴史を語っていましたが、本書は歴史の流れの中で感染症を見ていくもの。

個別個別の事例だけではなく、全体を通じた人類とウイルスの関係が深いこと。

もともと狩猟採集の生活をしていた頃は、人類はずっと感染症と縁のない生活をしていました。
しかし、集住・定住を始めると、人間同士だけではなく糞便とも接触する機会が増加してしまい、急性感染症との戦いが始まります。

しかし、ある集団がある感染症を持っている(≒一定の耐性を持っている)ことは、他の集団を攻撃する武器でもあり、他の集団からの攻撃を防御する武器ともあります。

昔はそれぞれの文明が持っている感染症は違ったらしいです。
人類はアメリカ大陸にベーリング海峡を通って渡ったと考えられていますが、その過程で一定の気温が必要な感染症は着いてこられなかったのではないかとも考えられるそうです。

中世のヨーロッパのペストは有名ですが、東ローマ帝国が版図を拡大できず人口を減らしてしまったこと、イスラムがサハラ以南に拡大できなかったこと、背景に感染症があるのではないかというのは興味深いところです。

大航海時代が訪れ、ヨーロッパが植民地化を始めると帝国医療・植民地医学と呼ばれる分野が勃興します。
最初はアフリカ(特に中部でしょう)にいったヨーロッパ人は次々と熱病で命を落としていていましたが、キニーネによるマラリア治療により劇的に改善。
感染症の対策がどんどん発展していきます。

20世紀前半の発見、進歩は著しいものがあります。
天然痘の撲滅は冷戦下、米ソ協調によって実施されました。
こうして感染症の脅威から人類は解放されたと思いきや、開発に伴い、新興感染症が現れてきます。

感染症が死因の座から引きずり下ろされてきたと思ったら、現在のコロナウイルス騒ぎです。

しかし、感染症はまだまだ謎が多く、大流行したと思うとなぜかどこともなく消えてしまうこともあるのです。
この理由は謎でしかありません。

進化医学という分野もあるらしい。
通常、感染症は拡がると共に弱毒化していく物なのに、スペイン風邪の3回の大流行で、最初の流行はより2回目の流行で致死率が高くなり、3回目の流行では再び低下。
人間の行動が感染症の原因に淘汰圧を及ぼしているのではないか。
マラリアの話でいえば、感染した人間を重症にして動けくしたほうが蚊に刺されやすくなって感染症からすれば有利ですが、皆が蚊帳で守るようになると、軽症で出歩いてもらった方が感染症としては拡大しやすくなります。

エピローグは「共生の道」という意味深な題が与えられています。
感染症と人類は、快適ではないが共生するしかないのではないか、という問いかけです。

感染症は人類の生活形態が生んだものであるのは上記の通り。
いくつかの感染症は動物由来であっても、もはや人間に感染することしかできなくなってしまっています。
人間の生活や対応が変わればウイルスも変わる。互いに影響を及ぼしている関係にあります。

今回のコロナウイルスでも、「これを機に人類の行動様式が変わる!」といった主張も散見しますが、そんなに簡単ではない印象です。
確かに変わるかも知れませんが、人類の行動様式が変われば、その行動様式に適応した感染症が現れる、それが逃げられない運命のようです。
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加藤茂孝「続・人類と感染症の歴史 ー新たな恐怖に備えるー」 [読書(教養書・実用書)]


続・人類と感染症の歴史 新たな恐怖に備える

続・人類と感染症の歴史 新たな恐怖に備える

  • 作者: 加藤 茂孝
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2018/05/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



引きこもり生活の中で感染症についての読書です。
もともと感染症には関心があって、ふりかえってみると家にそれなりに本があります。

また、放送大学でもいくつか科目をとってきていますね。
感染症と生体防御
人類と感染症の闘い

後者の面接授業は特に歴史にも触れながらの紹介で興味深く、講師の先生の書いた本も読みました。



人類と感染症の歴史

人類と感染症の歴史

  • 作者: 加藤 茂孝
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2013/03/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



そして、いつの間に続編が出ていたというのが今回読んだ本です。
前編とは違う感染症が取り上げられています。

【風疹】
ウイルス。
最初の導入ではまた風疹が取り上げられています。
以下に予防接種が重要か。年齢別の風疹報告者数を見ると予防接種の効果は抜群です。
以前の授業や本で印象に残っていたものもあり、(近所で麻疹が発生したこともあるが)麻疹・風疹ワクチンを去年、慈悲で受けてきたんですよね。
独身ですけど、職場にも女性が増えてきたし。

【HIV/AIDS】
ウイルス。
世界的に問題になったのが10~20代だったこともあり、怖い病気という記憶があります。
しかし、実はどうやらその前の1921年にはアフリカに存在していた病気らしい。
コンゴの1930年代の鉄道建設現場の労働者には広まっていて、そこで働いていたハイチ人に感染が広まっていたそうで、配置から1969年にアメリカに入った模様。
日本では血液製剤で感染が拡がってしまい、多くの教訓を残しました。

【ハンセン病】
菌。
これは文学にもなってきたほど古い病気。
どうも結核菌に近い菌による病気のようですね。

【狂犬病】
ウイルス。
パスツールがワクチンを開発。
私も10年打っていないので、旅行ができるようになったらまた打たねば。

【マラリア】
マラリア原虫。
これ、単細胞生物ですが、植物細胞が持つ葉緑体が進化した色素体様の細胞小器官があるそうで、祖先はなんと渦鞭毛藻類と同じ光合成生物であったとか。
水の中に住んでいるうちに、蚊を最終宿主、人間を中間宿主にする生き物になった。
驚き。
西表島に旅行したときにWikipediaなど読み、実は日本でも滋賀県、そして北海道でも流行していた病気だと言うことを知りました。決して熱帯の病気だから日本にいないのではなく、蚊を減らしたからいなくなったらしいです。

【梅毒】
菌。
これは、新大陸起源と思われる。
新大陸には旧大陸からたくさんの病気が持ち込まれて先住民を死に追いやったのは「銃・病原菌・鉄」で有名だが、これは逆。
ヨーロッパで見られる女性の背が広く開いたイブニングドレスは、背にできものができていないので梅毒にかかっていない、というアピールだったとか。

【コレラ】
菌。
インパール作戦では、ズボンを下ろしたまま死んでいた日本兵が多かったという。これはコレラ。
日本でも19世紀以降、複数回流行。
玉川上水にコレラ菌が流されているというデマをきっかけに、玉川上水が流れる三多摩地区は神奈川県から東京府に移管された。

【エボラ】
ウイルス。
映画にもなって恐ろしいウイルスとして知られているが、あまりにも致死率が激しいので拡がることが少ない。
しかし、2014年では比較的大規模の流行が西アフリカで起きてしまった。
死者の身体に触る葬祭の習慣が要因の一つだったと思われる。
また、当初は白装束の医療関係者に対する反感も生まれてしまった。

「緊急事態の中で、1人が多くをこなさなくてはいけない過酷な状況であるが、可能な限り文字通り双方向のコミュニケーションが大切であることがわかる。しかし、この実現には事態発生前の日常のネットワークができていないと大変難しい。」

現在の状況にも示唆的な指摘。
WHOの対応が遅れたという指摘はこのときもあった。

また、エボラの発生によって医療状況が悪化し、他の病気で亡くなる人が増えてしまったとの指摘もある。
エボラから奇跡的に生還した准看護師のカルワさんは、その後出産時の合併症で亡くなってしまったという。

【SARS/MERS】
現在話題?のコロナウイルス。
この章は現在公開されています。
是非ご一読を。
https://www.maruzen-publishing.co.jp/info/n19784.html


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日本列島100万年史 [読書(教養書・実用書)]


日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語 (ブルーバックス)

日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語 (ブルーバックス)

  • 作者: 山崎 晴雄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/01/18
  • メディア: 新書



旅行をしていると、地形というものに興味を惹かれずにはいられません。
なぜそこに街があるのか、どうして栄えたのか、どうして衰退したのか。
特に最近のように離島を旅行していると、離島の場合は生成の歴史的経緯によって、生態系も大きく異なってくるのです。

本書では日本列島がどのようにでき、各地方がどのような地形なのかを概観することができます。

構成としてはまず第1章で日本列島全体の形成と、以降も出て来るプレートテクニクスをはじめとした概念の説明が行われます。
1900~1500万年前に起こった日本海開裂によって、ユーラシア大陸の東端がちぎれて日本海が形成、つまり日本列島ができました。

続いて、第2章から第8章では北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州と地方毎に全体あるいは代表的な地形を解説しています。

やはり第1章が難しいけれども重要で、何度も読み返しました。

全体像としては、日本はユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートという3つのプレートがぶつかり合っているという場所にあると言うことが大きく、それぞれのプレートが動く方向、ぶつかって沈み込む位置(線)が重要です。

また、マグマが生成されるには高温が必要ですが、圧力が高すぎてもだめなので、プレートの沈み込みからちょうど深さ100kmくらいのところで生成されやすい。そのため、プレートの沈み込みから少しずれたところに火山が線上に並びます。

伊豆半島、そして富士山は、フィリピン海プレートが西向きに進みながらフィリピン海プレートに沈み込んだ結果生まれた、フィリピン海プレート上の火山フロントである伊豆バーが、フィリピン海プレート自体が北向きに移動してユーラシアプレートの下に沈み込むという特殊な構造で生まれているのですね。

また、気候変動の影響で2万年前には氷期で現在より120mほど海水面が低下し、その後1万年前からは一気に温暖化して海水面が上昇しています。

海水面が下がって陸続きになったところとならなかったところでは生態系の連続性に違いがありますし、海水面が上下すると河川の流れが急になったり緩やかになったりするので浸食の仕方が代わり、河岸段丘や扇状地が形成されます。

印象的だったのは活断層と人々の生活についての記述です。
今でこそ活断層は悪者扱いされ、その近くは良くない場所とされていますが、そもそも日本列島で人が住める平地や盆地は、活断層による高低差を土砂が埋めて作られたもの。
そして、平地や盆地の真ん中は川が氾濫して住みにくいので、平地や盆地の縁に住みがちであること。つまり活断層の近くですよね。
そうしたことを考えて、どこに住むのが正しいのかを考えなければならないということです。




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仏教抹殺 [読書(教養書・実用書)]


仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか (文春新書)

仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか (文春新書)

  • 作者: 鵜飼 秀徳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: 新書



松本に旅行したとき、松本城に隣接している松本市立博物館で展示を見ていて、松本は廃仏毀釈が激しかったところなので、寺が少ない、といった説明を読んだことが印象に残っていました。
廃仏毀釈は言葉としては日本史で勉強した覚えがあったものの、どんなものかは知らなかったので、本当にあったんだ、と。

その後、ある日新聞の書評を読んでいて、強い興味を持ったのがこの本です。

この本が言いたいことは「はじめに」に言い尽くされています。
明治維新後の廃仏毀釈の大波の中で、寺や仏像が破壊され、寺は半減。
鹿児島県などは一時寺もゼロ、僧侶もゼロになってしまった。
廃仏毀釈がなければ日本の国宝は現在の3倍もあったという話もあるそうです。

こうした話を聞くと、誰もが思い出すのがタリバンによるバーミヤンの磨崖仏の破壊で、もちろん、このことにも触れられています。

シルクロードを旅してみると、イスラム教徒や文化大革命で破壊された文化財をよく眼にして、なんと愚かなことを、と思いますが、日本でも同じことがあったのです。

第一章以降は、比叡山、水戸、薩摩、九州、宮崎、松本、苗木、隠岐、佐渡、伊勢、東京、奈良、京都と各地の廃仏毀釈の実態が紹介されていきます。
全国一律に起きたのではなく、濃淡があったのですよね。
ある藩だったところは徹底的に寺が破壊されているのに、そのすぐ隣は天領だったところで無傷とか。
著者は新聞社を経て独立して僧侶資格を持つ、という異色の経歴を持っていて、取材にもその経験が活かされているように感じます

冒頭の松本の場合は、かなり立派な寺があったのに、復活できませんでした。
それどころか、見てきた開智小学校の建物にも、破壊した寺の材木が使われていたのだそうです。
知らなかったなあ。

意外なことに、著者は「結びにかえて」で全体をふりかえる中で、廃仏毀釈にもプラスの側面があったのではないか、廃仏毀釈があったからこそ、仏教が消滅せずに現代まで生き残ったのではないか、と書いています。

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47都道府県庁所在都市 [読書(教養書・実用書)]


デジタル鳥瞰 47都道府県庁所在都市 東日本編 (The New Fifties)

デジタル鳥瞰 47都道府県庁所在都市 東日本編 (The New Fifties)

  • 作者: 八幡 和郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/08/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





デジタル鳥瞰 47都道府県庁所在都市 西日本編 (The New Fifties)

デジタル鳥瞰 47都道府県庁所在都市 西日本編 (The New Fifties)

  • 作者: 八幡 和郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/08/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



47都道府県庁所在都市を札幌から那覇まで上下巻に渡ってひたすら紹介していくという本。
(ちなみに、著者は蓮舫の国籍問題の追及で有名になった人。)
現在の鳥瞰写真から、旧国から藩、都道府県までの歴史、戦後頃と現在の写真、一人あたり消費財の消費量、県民性と俯瞰しています。

地図は平面図ではなく、高低差を強調したものなので、ちょっとブラタモリ風の楽しみ方が出来ます。
かつての城の位置や城下町の範囲も示されていますが、近世の城でも、かなり防御に気を配って配置されていることに気付かされました。平地にもポコンと高台があることがあり、そうした位置に築城されていたりします。
また、多くの都市が山間や河口の川沿いの平野に位置していますが、川のルートは防御や都市計画のために手を入れられているところがが多いようです。

旧国から都道府県への歴史について見ると、ほとんど変わっていないところもあれば、分割されたり吸収されたり、その際にくくり直されたところも多くあるようです。
富山県、福井県、鳥取県、香川県、徳島県、佐賀県、宮崎県など他の県と一緒にされてしまってから「独立」を果たしたところもあります。

都道府県の名称については、県庁所在地が属していた郡の名前をとったというところが多く見られます。
ややこしいことになっているところも歴史的に理由があり、栃木県には栃木市があるのに宇都宮市が県庁所在地となっているのは、宇都宮県と栃木県が合併して栃木に県庁所在地を置いたものの、県の中央にある宇都宮に県庁所在地を移したため、ということです。
三重県の場合もややこしく、安野津県と度会県に分かれていて、安野津県の県庁所在地は津であったものの、これを四日市に移し、四日市の郡名をとって三重県とし、再び津に戻して、度会県を併合して今に到ります。

私は47都道府県を制覇しているので、ほとんどの場所に行ったことがあり、ああ、あそこはああだったよな、とか思い出しながら読み進められました。
しかし、行っていないところもいくつかありますね。
泊まっていない、観光していない、仕事だけで行った、通過はした、などいろいろありますが、全く街を歩いたことがないのは以下。
意外と近場が盲点ですね。

福島市(駅前で仕事をしたことはある)
前橋市
津市
佐賀市 (空港だけ行ったことがある)


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伊藤隆「歴史と私」 [読書(教養書・実用書)]


歴史と私 - 史料と歩んだ歴史家の回想 (中公新書)

歴史と私 - 史料と歩んだ歴史家の回想 (中公新書)

  • 作者: 伊藤 隆
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/04/24
  • メディア: 新書



なんともシンプルで大胆なタイトル。
著者は1932年生まれの歴史学者で、これまでの人生と歴史研究を振り返るというもの。

研究対象は近現代で、関係者が書いた日記や、関係者のインタビューを集めるスタイルなので、とにかく色々な人名が出てきます。
最後のほうになると中曽根さんとか、竹下さんとか、宮澤さんとか知っている人が出てきますが、前のほうは全然分からないです。

ぽろりぽろりと出てくる裏話もそれぞれの人物の人柄をうかがえて面白いですが、昔の人って結構日記をつけていたんでしょうか。


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平野克己「経済大陸アフリカ」 [読書(教養書・実用書)]


経済大陸アフリカ (中公新書)

経済大陸アフリカ (中公新書)

  • 作者: 平野 克己
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2013/01/24
  • メディア: 新書





アフリカ大陸は南極大陸と並んでいったことがないところであり、最近興味津々です。
この本は買って置いたまま積ん読になっていましたが、読んでみると読み応えがある本でした。

ジャーナリストが書いた本はいろいろなエピソードが生き生きして面白いですが個別事例に留まりがちで、学者が書いた本はデータが豊富で勉強になりますが、淡々としすぎている感じがします。しかし、この本はその両方のいいとこ取りをしたような感じで、豊富なデータで、今アフリカ大陸で何が起きているのか、迫力を持って語ります。


成長のために資源を必要とする中国は今世紀になってから猛烈にアフリカへの投資を増やしており、日本を抜き去っています。中国をはじめとする資源への投資によって、長らく成長してこなかったアフリカは成長を始めています。

しかし、アフリカの弱みは農業生産にあるというのが著者の見立てで、貧弱な物流で肥料が買えないために無肥料の生産性が低い農業しか行っていないため、食料は輸入が増えて、都市の生活の高コスト化を招く。さらに、農業から余剰な労働力が生まれない。結果的に、アジアと異なり、人件費が高いために工業化が進まないのだそうです。

ちなみに、この肥料を投じる近代農業というのは結構重要で、肥料の原料となるリン鉱石やカリ鉱石の生産地は偏っているため、いくら農産物の国内自給率を高めていても、ここを押さえておかないと危ないのだそうです。なるほど。

世界的な経済格差については、かつて南北問題と呼ばれましたが、アジアが急成長を始めた結果、アフリカが取り残された形になりました。なぜ、アジアは成長して、アフリカは成長しないのかということは開発経済学の大きなテーマになったそうです。

先進国の国際援助はそれを解決するための手段として期待されているものの、実のところ各国がどのような地域に援助をしているかを見てみると、高邁な理念とは全く別の考え方で実施されているのが現状であると言うことも示されます。


中国経済の減速による資源価格の低迷など、この本が書かれた時点と少し状況が変わっているかな、と思う点もありますが、「最近アフリカが成長している」という話を理解するためには最適な本だと思います。





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宮本雄二「習近平の中国」 [読書(教養書・実用書)]


習近平の中国 (新潮新書)

習近平の中国 (新潮新書)

  • 作者: 宮本 雄二
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/05/16
  • メディア: 新書



駐中国大使を務めた著者は、中国のことを理解して欲しいという願いから新書という形式でまとめたそうです。

中国と関わりが深い著者は2001年の時点で、共産党の統治は長くは持たないと予測しましたが、結果的には現在でも続いています。その結果として、「中国の変化に共産党の統治能力の向上が追いつかなくなったとき、共産党の統治は終わる」という考え方になったそうです。

共産党は最高実力者の鄧小平が力を持つ体制でしたが、カリスマ亡き後は集団指導体制へと移行し、特に江沢民が退任後に自分の力を残したために胡錦濤は十分に力を発揮することが出来ませんでした。

しかし、胡錦濤の後の習近平は自分への権力の集中を強めています。これは本人の志向だけではなく、今の中国には強いリーダーシップが必要であるという意識が共産党に共有されているからではないかということです。

習近平は反腐敗運動として大物も含めてやり玉に挙げていますが、これはもちろん政敵を追い落とすという権力闘争の面はあるものの、共産党の統治を続けるために組織を変えなければならないという強い意志があるとのこと。

共産党の統治は常にその正統性が問われています。
経済の成長と社会の安定を実現していれば、国民に支持されるという構図でしたが、近頃の中国経済の減速がどのような影響を生むのかが気になります。
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