Kindle版にて。
歴史、特にイスラム世界や中央アジアの歴史に触れると、ペルシャというのがとても重要であることが分かる。
放送大学の高橋和夫教授は国際政治を専門にしているが、もともとはペルシャ語科の卒業ということで、イランはど真ん中のテーマ。
日本はイランとの関係が比較的良好であることもあって、アメリカとイランがなぜあれほどいがみ合っているのかわかりにくいが、本書はそれを歴史から説明しようとしている。
「イラン人はアメリカが大好きである」という前書きから始まるが、いがみ合う背景には期待の高さとそれを裏切られた失望というものがあるという。
イラン、というかペルシャは紀元前のアケメネス朝ペルシャから続く長い歴史があり、イスラムに飲み込まれた後も、文明を背負ってきたという自負がる。その一方で他国によって侵略されてきたという被害者意識がある。
(このあたり、中国にも似ていると感じる)
特に重要なのは、1950年代に登場したモサデク政権とその失脚で、当時の専制的なパフラヴィー朝(当時はパーレビと言っていた気がする)に対抗して、メジャーに支配された石油を国有化し、憲法を発布するなど近代化を進めたが、アメリカとイギリスが支援したクーデターによって失脚し、再びパフラヴィー朝が復活する。これがイランにとってのアメリカへの失望につながっている。
そして、この反動が後のパフラヴィー朝が崩壊してホメイニ師が権力を握るイスラム革命と、アメリカ大使館人質事件につながっていく。
パフラヴィー朝は専制的であったものの、親米であり、産油国であり、イスラエルとも友好的であり、アメリカにとっては誠に都合が良い政権であった。それが倒されたことからアメリカの反イランは始まっている。