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中川恵一「放射線医が語る被ばくと発がんの真実」 [読書(教養書・実用書)]


放射線医が語る被ばくと発がんの真実 (ベスト新書)

放射線医が語る被ばくと発がんの真実 (ベスト新書)

  • 作者: 中川 恵一
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2012/01/07
  • メディア: 新書




著者は東京電力福島第一原子力発電所の事故の比較的早い時期から情報発信を行ってきた専門家の一人です。ただ、放射性物質を過剰に恐れるべきではないという著者の意見に対して、「御用学者」というレッテルを貼る人も出てきてしまいました。

本を読んで分かりますが、著者の視点は、放射線医としてがん患者の治療に当たる立場からのものです。

内容を端的に言えば、
「放射線被ばくを恐れすぎても、また恐れなさすぎても、健康に悪影響が出てしまう」
「被ばくを実際以上に「心配しすぎること」が杞憂に終わるのではなく、マイナスにはたらく」
ということになります。

本書で述べられている要点は以下です。

・100ミリシーベルト以下だと発がんリスクはきわめて低い。
(たとえリスクがあったとしても、データとして検出できないくらいわずかなもの)

・日本人の2人に1人ががんになる。原因はおおざっぱに言って、1/3が喫煙、1/3が飲酒を含む生活習慣、残り1/3が運。がんにならない生活習慣と、早期発見が重要。

・生活習慣の発がんリスクは、100~200ミリシーベルトを浴びると1.08倍に対して、野菜不足で1.06倍、肥満で1.22倍、喫煙で1.6倍。

・原爆が落とされた広島市の女性の平均寿命は、政令指定都市の中で一番長い。出生率の高さは2番、死産率の低さは1番。これは、被爆手帳が交付され、手厚い医療が行われたためと考えられる。

・チェルノブイリ原発事故では、事故後、平均寿命が大きく下がった。ロシア政府の報告書によれば、
「精神的ストレス、慣れ親しんだ生活様式の破壊、経済活動の制限といった事故に伴う副次的な影響のほうが、放射線被ばくより遙かに大きな損害をもたらしたことが明らかになった」とされる。
この教訓を今回の事故にも生かさなければならない。過剰な避難は副次的なデメリットの方が大きい。

・ICRP勧告が人為的な原因(医療を除く)による被ばくを平常時は年間1ミリシーベルト、緊急時・事故直後は年間20~100ミリシーベルト、収束段階は年間1~20ミリシーベルトと場合分けしているのは、チェルノブイリで厳格な避難基準を適用したことが結果的に住民の短命化を招いてしまったという反省によるものである。


放射線をある程度浴びれば発がんリスクが高まるとしても、現実の発がんリスクはいろいろなものがある。
放射線による発がんリスクを心配するあまり、ほかの発がんリスクを高めてはならないということだと思います。

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