五味 洋治「父・金正日と私 金正男独占告白」 [読書(教養書・実用書)]
さて、Kindleデビューして初めての電子書籍は、「父・金正日と私 金正男独占告白」。
この本は本屋で見つけてちらちらと中身を見ていたのですが、一回読んだら終わりのたぐいの本だし、場所とるしな、ということで断念していたのをKindleストアで見つけて初めて買いました。
PCからamazonで買ったのですが、購入すると、部屋の無線LANにつながっているKindleに勝手にダウンロードされます。おもしろい。
この本は、著者がたまたま北京空港で出会った金正男に名刺を渡したところ、なんとメールのやりとりをするようになり、その後実際に面会してのインタビューもあわせて本にしたもの。
もともとメールのやりとりが中心で、ページの中の文章はすかすかだし、電子書籍で初めて読んでみるのにも良いかと。
内容はさらっと読めるもの。
特に今まで知られていなかった衝撃の事実が明らかになる、というものではなく、金正男という人物の人柄というか、性格がわかるといったほうが良いかもしれない。父である金正日や弟である金正恩については多少言及しているが、基本的に特定の人物に対する批評は慎重に避けている。
金正男という人物は、ディズニーランドにいくために日本に不法入国して捕まったという事件もあり、どら息子といったイメージがあるが、この本を読んでみると、きわめて普通の人物だという印象。
一つは、北朝鮮という国やその外交について、教条的な見方をしていたり、正当化しようとしたりするのではなく、普通に見ている。三世代の世襲は反対しつつも、そうなってしまったからには金正恩がうまくやると良いとか、北朝鮮の経済を立て直すには中国のように改革開放を進めるしかないとか。常識的な感覚を持っている。
その反面、詳細はわからないが改革開放を主張したために北朝鮮の権力の中枢からは外されてしまっていること、メールのやりとりが公開されたことによって北朝鮮から警告を受けてしまったらしいことなどを見ると、権謀術数を駆使して生き残っていくといった非凡さはあまり感じられない。そうした意味でも普通の人物と感じる。
最後に書かれた著者の見立てでは、中国が金正男を事実上保護しているのは、北朝鮮が不安定になったときに金正男を立てるという選択肢を持つためだというが、そこまでうまくいくものかどうか。
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