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藤原和彦「イスラム過激原理主義」 [読書(教養書・実用書)]

去年のゴールデンウィークはイスラエルに旅行しましたが、モーゼが十戒を授かったシナイ半島には行けませんでした。シナイ半島は現在エジプトに属していますが、イスラエルのエイラットからのツアーが定番です。
何も知らずにツアーを申し込んでしまったのですが、「安全面からツアーを中止している」という返事が。
エジプトはムバラク政権が倒れてから不安定化し、旅行した時点(モルシ政権下)でも特にシナイ半島は治安が悪化していたようでした。観光地なのに。
つい先日も韓国人が乗った観光客が爆破されるテロが起きましたが、これもおそらくイスラエルからシナイ半島を訪れるツアー。事件が起きたエジプトのタバはイスラエルとの国境の町で、エイラットの目の前です。


さて、この本はイスラム過激派について書いた本ですが、その主な舞台はエジプトです。
新書ではありますが、巻末には索引や年表がまとめられ、相当にしっかりとした本です。

イスラム過激派といえば2001年のアメリカ同時多発テロが頭に浮かびますが、それは1997年にルクソールで起きた観光客殺害の事件とつながっています。日本人も巻き込まれたこのルクソール事件は、遺跡の出入り口をふさいで逃げ道をなくし、犠牲者ののどをナイフで切り裂き、胸や腹をえぐるという大変に残酷なものです。

そしてこのルクソール事件は、1979年から1989年までのソ連によるアフガニスタン侵攻まで遡ります。
「無神論の悪魔」ソ連によるイスラム教の国アフガニスタンの侵攻に対して、多くの「義勇兵」が参戦します。彼ら「アラブ・アフガンズ」がその後のテロにつながっています。

(行ったことありませんが)エジプトはナイル川の上流と下流という意味で、「上エジプト」「下エジプト」に分かれますが、ルクソールがある上エジプトは貧しいのです。

イスラム過激派が頭が悪い狂信的な宗教者と見るのは誤解です。
ルクソール事件を起こしたイスラム集団は上エジプトの大学の学生組織の流れを引いています。
貧しいからそうした活動が起こるのだというのも単純化に過ぎます。
要因は様々で複雑なので、どうすればいいのかも難しいように感じます。

ルクソール事件は上述のように亡くなった犠牲者の遺体を傷つけたため、イスラム教の教えに反したタムシールという行為だとイスラム過激派の中からも批判されました。
イスラム過激派にも彼らなりの理論があり、そうした教えや思想も理解してその行動を見ることが大切だと感じます。

独裁政権に問題があり、民主的な政権ができれば解決するというのも単純すぎます。
彼らにとって、主権は神にあるものであり、人間が主権者になる民主主義は認められない、という考え方のようです。
国民の代わりに独裁者が権利を持っているのが問題ではなく、神の代わりに独裁者が権力を持っているのでおかしいということです。
議会ではなく、「諮問会議」という言葉が良く出てくるのもそうした背景があるようです。

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