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ランドール・ササキ「沈没船が教える世界史」 [読書(教養書・実用書)]


沈没船が教える世界史 (メディアファクトリー新書)

沈没船が教える世界史 (メディアファクトリー新書)

  • 作者: ランドール・ササキ
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/12/21
  • メディア: 新書



元寇の遺物が水中に眠る鷹島神崎遺跡は、今年2012年の3月に水中のものとして初めて国の史跡に指定されました。
http://www.city-matsuura.jp/www/contents/1334801492921/index.html

さて、この本はその前に書かれた本ですが、これまであまり対象とされなかった水中考古学について、一般向けに平易に解説しています。

遺跡というのは陸上だけではなく、特に沈没した船などは水中に残っているのですが、技術的な問題もあってこれまでは考古学でも対象とされてきませんでした。しかし、20世紀の初めから、「スポンジ・ダイバー」を使った調査が行われるようになり、最近では考古学者が潜水技術を身につけて調査を行うようになってきています。

本書の中では、世界の交易が飛躍的に発達した大航海時代、そしてその前の紀元前までさかのぼる時代、そして日本を含むアジアについて、沈没船あるいは沈んだ街の調査事例を紹介しています。

陸上ではなく、水中の沈没船を調べるのは大変ですが、それでも以下のようなメリットがあるとしています。

1つ目は、保存状態。特に有機物が環境次第では残っています。たとえば、ポルトガルのリスボン近くで見つかった「ペッパーレック」では、胡椒が見つかっていて、この時代に確かに胡椒が貿易されていたことがわかります。

2つ目は、必需品であること。狭い船に持ち込むからには何らかの理由があります。トルコ南部で見つかった「ケープ・ゲラドニャ沈没船」からは青銅の破片が大量に見つかっています。陸上であればゴミと区別がつきませんが、船から見つかったということは、これらが価値あるものとして何らかの意図を持って運ばれていたことがわかります。リサイクルらしいですが。

3つ目は、移動の情報であること。ある地点からある地点まで、ある日時に移動中だったという情報がわかるので、交易や流通が鮮やかにわかる、というわけです。

終章では漁業や開発で破壊されがちな水中遺跡の保護について訴えていますが、日本でも冒頭のように保存の動きが出ていることは良いことだと思います。

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