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途上国を考える [放送大学]

さて、今学期の単位認定試験、3科目目は「途上国を考える」。

講師の高木保興教授は理路整然としていて好きで、以前受講した「途上国の開発」も面白かったので、今年度に開設されて早々受講することにしました。

「途上国の開発」
http://t-takaya.blog.so-net.ne.jp/2010-07-29

河合明宣教授とのコンビというのも同じで、今回の「途上国を考える」では、現地取材の映像を紹介する役割周りになっています。

この「途上国を考える」というタイトルは、「途上国の現場を精力的に歩き、多くの人に会って話を聞くという地域研究者の手法とは異なっているので」あえてつけたタイトルと言うことで、15回各回のタイトルも「~を考える」となっています。


冒頭の第1回から「イギリスの産業革命を考える」というタイトルで、18世紀にイギリスで産業革命が起きた理由として、以下の3点を挙げています。

・大型機械導入を促す技術革新と安価なエネルギーの利用が可能であったこと
・国内市場だけでなく海外にも大きな輸出市場を確保できたこと
・政府が経済活動を活発にする環境整備を最優先したこと

では、途上国はこうした条件を満たしているのか?というのが課題となりますが、それは悲観的に考えざるを得ません。

・石油ショック後も原油価格は上昇を続け、現在では1バレル100ドル水準。
・WTOに加盟するのは困難であり、FTAによるブロック化が進んでいる。
・植民地にされてから独立した結果、人為的な国境が引かれ、国民の統合が不十分で、強力な政策を推進できない。

こういう厳しい環境の中で何ができるのか、というのが以降の議論です。
これは解がなく、今でも試行錯誤が続いていることだと思います。


こうした今でもアルゼンチンのデフォルト問題が課題になっています。
アルゼンチンなんて、かつてはとても豊かな国で、敗戦で荒廃した戦後の日本を援助してくれたぐらいなんですよね。
http://www.ar.emb-japan.go.jp/ContenidoJP/07.TurismoDetallesJP.htm
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初歩のアラビア語 [放送大学]

今学期の単位認定試験の2科目目は「初歩のアラビア語」。

英語もできないのにいろいろ目移りしてしまってどれもものにならないという困ったことになっていますが、アラビア語については、イスラエルに行ったときに、バスの行き先表示が全く分からなくて難儀したという経験があり、初歩的なところでもやっておかないといろいろ旅行するのに困ると思っていました。
(ちなみにあまり知られていませんが、イスラエルの公用語はヘブライ語とアラビア語です。)

アラビア語を学ぶ上で苦労するのがあの文字。
15回の授業でも前半はこの文字の学習に当てられています。

筆記体でつながっているけど、28文字しかないよ、と言われると一瞬簡単に思われますが、実は一つ一つの文字に、独立して書かれる場合の「独立形」、書き始めに使われる「頭形」、途中に使われる「中形」、書き終わりに使われる「尾形」の4つがあり、それぞれ似ていることもあれば全くかけ離れている場合もあるので大変です。
アルファベットでも、大文字と小文字、ブロック体と筆記体があるので同じという気もしますが。

単語毎につなげて書くというのが原則ですが、つなげない文字、後ろにはつなげない文字、連続でつながった場合に一体化する文字などがあります。
さらに、文字にくっつけることによって読み方を変える補助記号があり、なかなか複雑です。

さらに、最大の問題は、「子音しか書かない」というルール。
文字につけることによって、母音の発音を示す、いわばふりがなのような補助記号があるのですが、それはコーランや子ども向けの本にくらいしか振っていないらしく、普通の文章を見ても、どう発音するか、単語を知っていないと分かりません。

まあ、母音はア、イ、ウの3つしかないんですけどね。その代わり、タやハに相当する子音がたくさんあって区別は難しい。

さらに、文字をクリアしても文法。
名詞には男性、女性、単数、複数の違いがあります。正確に言うと2つの場合の複数形である双数形というのもある。
そして、形容詞は名詞にあわせて活用するし、動詞も人称代名詞を使う代わりに活用する。

はああ。

さらに、これだけ一生懸命覚えても、実はアラビア語というのは一つではなく、教えられるのはフスハーという文語であり、多くのアラビア語話者が話せるものの、通常各地ではアンミーヤという各地の方言を話しているそうです。
あー。



なんか愚痴みたいですね。
いや、文字はある程度分かるようになりましたが、会話できたり、読んだりできるにはほど遠いですね。
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南北アメリカの歴史 [放送大学]

今学期の試験もようやくおしまい。
繁忙期ではないものの、それなりに週末に予定があって、なかなかしんどく感じました。

単位認定試験の1科目目は「南北アメリカの歴史」。

以前に「アメリカの歴史と文化」
http://t-takaya.blog.so-net.ne.jp/2013-02-02
を受講していたのですが、今回は「南北」です。


以前は漠然と進んでいる欧米(と日本)、それ以外の途上国という単純化した世界観を持っていましたが、それが大きく覆されたのは、ラテンアメリカに旅行してからです。

「同じようにヨーロッパの植民地となって移民を受け入れてから独立したにもかかわらず、中南米はどこで躓いてしまったのか?」
「逆に言えば、北米はなぜこれほど短期間に発展したのか?」


北アメリカの歴史については上述の科目と重複するところもありましたが、今回の授業は南北を交互に歴史を進めていくので、その点において新鮮でした。


人類が当時陸続きだったベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸に到達して以降、海で閉ざされた南北アメリカ大陸は旧世界とは異なる独自の発展を遂げます。

ヨーロッパに「発見」された当時、ラテンアメリカには、アステカ王国、インカ帝国という階層化された高度な社会が存在していました。インカ帝国に到っては、文字も車輪も欠いているという旧世界からすればなかなか想像しにくい独自性を持っていたことになります。
その点、北アメリカにはそうした大規模な社会が存在しませんでした。

そのため、ラテンアメリカには、王国が蓄積した貴金属等の富を求めた征服が行われ、征服者による支配もその社会構造を基盤とし、旧来の支配者の代わりにスペイン人が就くというという形態で行われます。
ラテンアメリカ支配で用いられたエンコミエンダという制度は、エンコメンデロという支配者が、先住民の支配を「委託」され、保護とキリスト教化を求められる代わりに、先住民労働徴用権を持つという仕組みです。これは、イベリア半島のレコンキスタで行われた仕組みの延長にあるとされています。

エンコミエンダ制度はスペイン本国の意向もあり、ラテンアメリカ地域毎におかれた副王と、その下に置かれたアウディエンシア(聴許院)、さらに地方官僚コレヒドール、都市ごとの都市参事会(カビルド)という統治形態に移行していきますが、有力者による支配であり、民主的なものとは異なっていました。

スペインの内戦を機にラテンアメリカ諸国は独立しますが、その際に1国では大きすぎ、結局このアウディエンシアの管轄区をもとにした国々に分かれます。


一方、北米では先住民を支配するのではなく、先住民を追い出しながら、移民によってイギリスの植民地が形成されていきます。
イギリスから独立した当時は東部のみの領域を持っていましたが、独立後にフランスやスペインの植民地も吸収して、西へ西へ拡張していき、現在の領域に到ります。この経緯にもヨーロッパでの政治情勢が影響しています。
植民者による民主的な議会が発達していたこともラテンアメリカと異なります。しかし、先住民、連れてこられた奴隷はここに加わることができず、20世紀の公民権運動、そして現在に到るまでの長い差別の歴史が続きます。


結局のところ、旧世界と衝突した際の社会構造が違っていたことが後々までの歴史に影響を与えていて、また、南北アメリカの歴史はヨーロッパの政治情勢を強く受けていた、ということを感じます。



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辺境からみる古代ローマ帝国 [放送大学]

ということで、この週末は今学期最後の面接授業。

ローマ帝国というのは知れば知るほどすごいものだと思いますが、今回はその辺境を取りあげて、何が起こったかをみようというもの。その辺境とは具体的に今でいうイギリスとリビア。

初めての海外旅行はイギリス(ロンドン)で、中世の立派な建築物がたくさん残っていてびっくりしました。
しかし、その後にローマに行くと、古代の遺跡がごろごろしていて、これはさらにレベルが違うとびっくりしたことを覚えています。

実は、イギリス、というかロンドンがあるグレート・ブリテン島の南部もローマ帝国に支配されていましたが、その期間は他の地中海沿岸地域より短く、遺跡もあまり残っていません。今考えると、それが当時の印象を生んだのだと思います。

グレート・ブリテン島はガリア(北部フランスのあたり)のさらに先にあるので、ローマ帝国にとっては遠い。それでも、征服を試みます。ところが、意外にこの島に住む先住民は戦闘力が高く、苦労します。

クラウディウス帝の時代にようやく征服したものの、その後イケニ族のブーディカという現地王家の女性に反乱を起こされて、一時はロンドンを見捨てざるを得ないほど手こずることになります。
このブーディカという女性が戦車に乗っている像はロンドンにもあるそうで、その後の女王の下で大英帝国が繁栄するというストーリーの下敷きにもなっているそうです。

(西)ローマ帝国が滅んだ後に侵入したゲルマン人(アングロ・サクソン)はローマが支配した地域に入り、これがイングランドになります。グレート・ブリテン島の先住民はケルト系ですが、彼らはこれらのゲルマン人と混じらずに、ウェールズやスコットランドに残ることになります。これが今のグレート・ブリテン島の民族構成となります。

一方、ガリアではローマ帝国の支配期間が長かったため、先住民のケルト系は十分に文明化(ローマ化)されており、ここに(西)ローマ帝国崩壊後にゲルマン系のフランク族が流入した結果、先住民を無視できずに混じり合うことになり、フランス語をはじめとする文化の中にローマ帝国の痕跡を残すことになったという解釈です。



さて、もう一つの辺境はリビア。
リビアは隣のカルタゴが滅ぼされ、レプティス・マグナ、サブラタ、オエア(今のトリポリ)はローマ帝国の都市として発展します。灌漑農業が内陸まで発展し、ローマに穀物やオリーブ油を供給して経済的にも栄え、リビア出身の皇帝も現れるに到ります。レプティス・マグナは現在でも大規模なローマ帝国の遺跡が残っているようで、是非行ってみたいところです。

しかし、(西)ローマ帝国が滅びた後は内陸部の農業も放棄されてしまい、その後二度と回復することはありませんでした。帝国の存在が巨大な交易市場を生んで生産を刺激したことが重要だったのだと思われます。



ローマ帝国の後に中世ヨーロッパが停滞・暗黒かどうかというのは議論があるようですが、少なくとも文化や文明が一方向に発展するのではなく、後戻りしてしまうこともあるのだというのは現代社会に生きる我々にも教訓を与えているように思います。
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国際経済の理論と現状 [放送大学]

ちょっと時間が開いてしまいましたが、今学期初めての面接授業。
めずらしく実用系の科目。

「国際経済」というのも範囲が何かわかりにくい分野ですね。
単なる国際収支の話にとどまりませんが、国際収支の範囲でいくつか勉強したこと。

・「収支」という際に、資金の流出をマイナス、資金の流入をプラスと呼ぶ。商品輸出はプラスだが、資本輸出はマイナス。
・単純に収支がプラスなのが良いというものでもない。

・日本はサービス収支がマイナスだが、貿易収支もマイナスに転じた。なので、貿易・サービス収支はマイナス。
・所得収支はプラスなので、貿易・サービス収支をカバーして、経常収支はプラス。

・資本収支はマイナス。
・対外証券投資も、対内証券投資も国際比較で高水準。
・一方、対外直接投資は国際的に高水準だが、対内直接投資は低水準。
・なお、証券投資と直接投資の違いは、10%以上の株式を保有するかどうかといった程度問題。
・わが国の対外投資は証券投資が直接投資より大きい。
・直接投資は製造業が中心であり、地域としては対アジアが伸長している。収益率は証券投資も直接投資も国際比較で遜色ない水準にある。

レポートが課されていて考えたのですが、こうした現状から今後の課題を考えると以下でしょうか。
• 製造業だけではなく、サービス業もアジアを市場としていくこと。
• 証券投資より支配力が高い直接投資に重点を移し、経営に関与することによって収益率を高めていく。

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平成25年度2学期(10学期目) [放送大学]

今学期の成績が出ていました。
が、今学期の試験は年度末の仕事との関係もあり、一番きつかった・・・。

[放送授業]
国際理解のために A
事例から学ぶ日本国憲法 A○
食と健康 A○

[面接授業]
熱帯の農業と農村 合

記述式はA○をとるのは難しいですね。


入学してから10学期(5年)。

卒業までに必要な単位124単位のうち、
修得済単位83単位、不足単位数41単位。

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食と健康 [放送大学]

随分と試験から時間が経ってしまいましたが、最後は「食と健康」。

放送大学のチャンネルを見ていたら、ちょうど糖尿病とか高血圧の話をインタビュー形式でわかりやすくしていて、健康診断で脅された後だったこともあり、履修してみました。
珍しく理系科目。

まえがきで、
「健康や病気の問題を考えるとき、「分子」を基礎にして考えるときに初めて正しい理解が可能となる。」
とか、
「その理解のためには分子に関する学門である化学の基礎が必須」
とか、
「これを理解し活用するためには栄養素の化学の知識が必須である」
とか妙に強調されているなあ、と思っていましたが、これが大変なことに。

第1回目は、元素・原子とは?といった話が始まり、ああ、一般向けにはここから始めるのね、と軽く見ていたのですが、2~3ページで電子軌道の話まで進み、あれ、どうだったけ?という雰囲気に。

以降の回も糖質、脂質、タンパク質、ビタミンとミネラル・・・のようにひたすら化学、それも有機化学の話が進むことに・・・。

一応昔は理系と呼ばれた時期もあったのですが、高校では3年生で化学をやったため、最後の有機化学は良く理解しないまま受験を迎えることに・・・。
学科も無機材料工学科で有機とはほとんど無縁で過ごし、大学院受験の際にようやくきちんと基礎から勉強しましたが、その時以来、その知識も使わずに。

ちなみに「有機」はかつては生物が作るものとか変遷しているもののいろいろと定義がありますが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%89%E6%A9%9F%E5%8C%96%E5%90%88%E7%89%A9
「無機」の定義は「有機」以外。以上。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E6%A9%9F%E5%8C%96%E5%90%88%E7%89%A9

というわけで、有機化学のカルボキシル基とかケト基とか知らない専門用語がたくさん出てきて四苦八苦。
物質の名前もちんぷんかんぷんで哲学でギリシャ人の名前を覚えているよう。
自分が文系であることを再認識。

人間の消化って、糖質や脂肪を小さな分子に分解して、また大きな分子に再合成するという一見無駄なことを延々とやっているんですね。
また、免疫というのは自己と自己でないものを区別するということ。消化との関連で考えると、アレルギーというのも深い話です。

まあ、試験は教科書持ち込みなので何とかなりました。
後半は最初に番組を見たようなインタビューも取り入れたわかりやすい話でした。

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国際理解のために [放送大学]

今学期の単位認定試験の2科目目。

通常ラジオの科目はテキストの「朗読」になっているので聞かないのですが、本科目はテキストの内容をベースにしながら、毎回ゲストのインタビューがあり、さらには関連した音楽を取り入れて工夫されているので、全回聞きました。

内容としては、いわば二部構成で、前半は宗教の話、後半は日本の領土問題の話となっています。
後半は、別に「一瞬で分かる世界と日本の領土問題」という本を著していたとのことで、その内容に依拠しているとのこと。

まず前半についてはユダヤ教、キリスト教、イスラム教に加え、ゾロアスター教が取り上げられている。
ゾロアスター教が取り上げられているのは担当の高橋和夫教授がペルシャに詳しいということもあると思いますが、この宗教がユダヤ教に先行して生まれた結果、ユダヤ教に強い影響を与えていること、結果としてユダヤ教の影響を受けたキリスト教、イスラム教にも影響を与えていること、仏教にも影響を与えていること、そしてこれから勃興が予測されるインドでゾロアスター教徒が強い影響力を持っていることにあります。

確かにゾロアスター教についてはそもそも今でも信者がいるの?というレベルで日本では知られていないし、私自身信者に会ったことがない。しかし、学んでみるとこれは確かに面白い。

ゾロアスター教の世界観というのは、以下の3点。

(1)世界はアフラ・マズダという善(光)の神と、アーリマンという悪(闇)の悪魔との戦いである。
(2)この戦いは永遠に続くのではなく、最後の審判で終わる。
(3)アフラ・マズダに従った人は天国に行ける。

#ちなみに車のマツダはアフラ・マズダにちなんでいるとのことです。

このアイデアは、ほとんどユダヤ教、キリスト教、イスラム教に引き継がれています。
ユダヤ人はバビロン捕囚によって当地で栄えていたゾロアスター教の影響を受け、旧約聖書もこの後に書かれた部分が多いようです。

さらに、キリスト教の新約聖書で、イエス・キリストが生まれる際の「東方の三博士」とはゾロアスター教の神官を指しています。

このゾロアスター教はペルシャがイスラム教に覆われることによって勢いはなくなってしまうものの、一部のゾロアスター教徒はインドに移住し、「パールシー」(ペルシャから来た語)として独自のコミュニティを作っています。
人数としては少数ですが、タタ・グループ等の財閥を率いているのはこのパールシーです。

日本との関係でいえば、仏像がよく背負っている炎のレリーフは、拝火教とも呼ばれたゾロアスター教の影響を中央アジアで受けた結果だと考えられています。


後半は領土問題。

これはいろいろな考え方や議論があるので、日本だけではなく、相手の主張も正確に理解しようという趣旨。

尖閣諸島、竹島、北方領土、沖ノ鳥島といろいろありますが、先占の議論だけではなく、第二次世界大戦とその後の主権回復の過程でどのように扱われたかという解釈が一つの争点となっています。

靖国問題など戦後処理については最近でもいろいろ議論になっているところですが、日本は敗戦国として戦後を歩み始めたということについて、改めて考えさせられました。
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事例から学ぶ日本国憲法 [放送大学]

さて、仕事もばたばたなのですが、今学期の単位認定試験の始まり。
一科目目は「事例から学ぶ日本国憲法」。

安倍政権になって憲法改正がぐっと具体的な問題となってきていますが、その前提として憲法を勉強してみよう、ということで、これは講師の問題意識でもあるようです。

憲法について学ぶのは、高校の「現代社会」以来であり、当時のことは憲法のあっさりとした紹介と、地鎮祭訴訟など有名な訴訟の結果の紹介くらいしか思い出せません。それらは「事実」やいわば「正解」として理解していて、疑問を持つ対象とはならなかった気がします。
もちろん、その時点でも9条のように素直に読むと理解できないものもあったのですが、大人になってみると世界の異なる政体についての知識も蓄えられてくることもあり、「どうしてこうなっているんだろう」という分析の対象としてとても興味深くなってきます。

講義は国会、内閣、裁判所といった統治機構や地方自治について最初に概観し、後半は人権について多くのページが割かれています。それぞれ、具体的な事例が示され、これが憲法から見て正しいかどうかという議論が展開されます。これはこういう意味、というだけではなく複数の論が紹介され、その上で一応どれが有力かという結論が示されます。詳細な議論ではないのかもしれませんが、もう一段だけ深く知ってみたいというニーズにはぴったりです。


改めて憲法を見てみると、最初の国会のあたりからもとても新鮮。
まず第一に、憲法だけではほとんどのことが決まっていない、ということ。内閣法等の法律で補完されているのはもちろん、慣習であることがとても多い。国会の最初に天皇陛下がおことばを述べる、閣議は全会一致であるとか、どこにも根拠がない。

さらに、憲法に書いてあることも理念としてはごもっともであるものの、具体的な事例に当てはめるとどう解釈して良いか分からないことが多い。そうした課題について議論していきます。



・国会が国権の最高機関とは具体的にどういうことか。三権分立であるはずだが、その中で国会が他の二つより上にあるということか?

・公務員は全国民の代表であるべきなのに、政党ができてそれに支配されることは許されるのか?

・都道府県と市町村という地方自治の仕組みを道州制に再編することは許されるのか。地方自治を認めるということと、国が地方自治の制度を変えることを認めるということは両立するのか?

・法律の範囲内で条例を定めるというのはどういうことか。法律より厳しい条例、法律では対象としていないものまで含める条例を定めて良いのか?

・法の下の平等とはどういうことか。すべて平等であるなら、累進課税も憲法違反ではないか?

・憲法が保障する人権は、日本国籍を持つ自然人のみが対象か。天皇・皇族、法人、外国人には適用されないのか?



最後の人権の適用対象も、憲法では「何人も」と「国民は」が書き分けられているので、前者は外国人も含み、後者は日本人だけ、としたいところですが、どうもそのあたりは厳密に書かれていない様子。作って一回も手直ししていないものですからね。

結果的に最高裁の判決等で補って考えなければならないのですが、そういった解釈でいいのか、憲法を変えていくのがいいのかは難しそうです。

特に第9条。
子供の時にこれを読んだときにはどう見ても非武装を規定していて、自衛隊は違憲ではないかと思ったのですが、そう単純でもない。そもそも「前項の目的を達するため、」という文言が挿入された、いわゆる芦田修正が行われていますが、それでも解釈は難しい。

自衛戦力合憲論と、自衛力合憲論というのがあるそうです。

自衛戦力合憲論というのは、1項で禁じているのは侵略戦争であり、2項では侵略戦争のための戦力の保持を禁じている。そのため、自衛のための戦力は認められるという考え方。なので、自衛隊は合憲。

一方、自衛力合憲論というのは現在の政府の解釈であり、2項では全面的に戦力の保持を禁じている。だが、自衛のための最低限度の実力組織は戦力ではないために合憲。なので、自衛隊は合憲。

なんか無理があるように感じられますが、どうでしょう。
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熱帯の農業と農村 [放送大学]

今学期唯一の面接授業に行ってきました。
何だかこのところばたばたしていて、試験の準備にも時間がとれていない状況なので、ちょっと無理があったかも。

講師のバックグラウンドを反映して、タイトルに限定されない幅広い内容を含んでいましたが、稲作の話は興味深いものがありました。
田無という地名があるくらい水田がない多摩地域で育ったので、稲作のことは詳しくないものの、世界各地の稲作を見ると多様ですし、日本の特徴も見えてきます。

・苗床で育てた苗を本田に田植えする方法は一般的に見られるが、デルタ地帯のように水深が深いところでは直播もされている。
・日本の水田のように整然と苗を並べての田植えはどこでもそうではなく、雑然と植えられているところも多い。
・熱帯では年中稲の生育が可能なので、二期作、三期作が可能。1年に1回育てるという日本のやり方が当たり前ではない。

日本の田の中の稲の背丈がぴしっと揃っているのも高い技術なのだそうです。


さて、それ以外に世界の国の主要な食糧という話が面白い。
中南米はトウモロコシ、アフリカはイモと雑穀、アジアは米という全体像ですが、アジアでトウモロコシが主になっている国がある。マレーシアと、なんと日本。日本は米ではなく、トウモロコシ主体ということ。
コーンフレークばかり食べているわけでもないし、と分からなかったのですが、穀物は人間だけが食べているのではなく、家畜も食べているのでそういう結果になるようです。

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